わたしの胸を
夜行列車が横切るとき
感傷的な朝焼けを見たい
列車の走行音だけが響く
夜はしずかで
隣の区画から寝息が聞こえる
何ひとつ知らない他人も
同じように眠ると知った
目的地だけを共有して
わたしたち交流しない
ただ空間を分け合い
互いをおびやかさない
距離
何かをなつかしく振り返るとき
今ではないどこかへ
自分を分離させている
あの妙に穏やかな
距離
孤立せず孤独を味わう
この身ひとつで
どこまでも行かねばならないこと
どこへ行ってもよいこと
ふたつの間で揺れる
わたしは
何者になれるのかも見えない
二十歳だった
ようやくひとりで行動することに慣れて
世界の広さに怯えた
もう何年も経ったけれど
まだ
B寝台の下の段にぽつんと
座っていた感覚が抜けない
幾分小さくなった怯えを抱えながら
少しあの頃より見通しがついた
それだけの日々
二〇一九年に「みなも」というネットプリントを発行していましたが、いろいろ考えてしまって長くは続かず、冊子『みなものまとめ』を作って終了しました。
その頃と今で何が変わったかというと、世界は新型コロナウイルス感染症で大変な状況ですが、わたし自身はあまり変わっていない気がします。
いや、今後の詩の活動をどうしたらよいのか見えなくなったり、詩との関係性に悩んだり、いっそ詩をやめようかなと思ったりしました。これからどうするかは、もう一冊詩集を出してその時見えた景色で考えたいですし、何が見えるかわからないけれど、詩はやめない方向で考えています。いつも全力で詩と向き合えなくても、三〇%や二%でも詩と繋がっておこうと思います。
それでも、なかなか詩が書けずにいて、自分の私家版詩集を読み返して、自分が詩で何をしたかったのかを思い出しました。詩を使って何かを言いたかったのではなく、ただ、日常の中の感覚を書き残したかったのです。ここに行きついたので、自分は変わっていない気がしたのでした。
詩とどう向き合っていくのか、まだ結論を出していない中で、ふと、ネットプリントをもう一度始めてみようかな、と思ったので、気が変わらないうちに作ります。あと、コンビニにクリアファイルを持って行き忘れちゃうとか、出力しそびれた過去のものを読みたいといったこともあるので、同じ内容をサイトにも載せます。
やるからには定期的にやるのがいいなと思って、最初は毎月公開と思ったのだけれど、それは自分で自分を苦しめるのではないかと気づき、奇数月の第一土曜日公開にします。「作りたいから作る」以外のことを今は考えず、作るのが無理なときは一回お休みします。そして、やっぱり合わないな、続けられないなと思ったらしばし休刊して、気が向いたら復刊というくらいの少し気楽な気持ちでやってみます。
詩を発表する頻度を決めたことで、新しい詩の扉が開けたらいいなと思っています。