水あと

夜の道路は水面になって
車窓に光る
ほそい雨粒をまといながら
電車は暗がりと近い色をしているだろう

水の筋ごとに灯りがともるので
人びとが生きていることが分かる
時々現れるぽっかりしたさざ波は
この辺りに少ない田んぼだ

言いたいことを飲み込み
ゆび先にちょっと力を込める
そんな瞬間がどうしても
焦げついて離れない

窓にゆびを重ねる
火傷を冷やすつもりで
すーっと伸びていく水滴を追う
思えば、うっすらとした痕は
いくらでもある
身体に、街角に、この窓にも

諦めることと
受け入れることは 違う
わたしは手元に残したもので
水の路面を踏む

電車はゆっくりと減速を始めた
もうすぐ、降車駅に着く
町をほそい雨が覆っている
ブレーキとアナウンスだけが響く
静かだ

2019/6/1~6/5