電車スケッチ

元町まで映画を見に行く
昼過ぎの電車は
すべての窓のブラインドが
半分だけ降ろされて
隣に座るおばさまは
楽しげな鼻歌をこぼす
他人との膜も薄くなる
春と初夏の境い目

半分の車窓は それでも
いくぶん眩しく
街から街へと連なる間に
川が挟まって
水面ますます乱反射する

すっかり電車は柔らかな箱で
乗客たちものどかに座って
外や内を眺めたり
たまに眠ったりしている

数十分間の共有
生きている時間のほんの一瞬に
同じ空気を呼吸しただけのわたしたち
それぞれの辿り着く先へ
開いたドアから飛び出していく

 

2019/5/5