※あくまで、海老名個人の体験談です。
※個別のご相談にはお答えできません。悪しからず。
何度か書こうと思っては、どこまで何を書いたらいいのかわからなくなっては挫折している「私家版詩集を作った話」を書いてみようと思う。
私家版を作ったきっかけを思い出すと、2015年に文学フリマを知って、9月に開催された文学フリマ大阪に遊びに行ったことが挙げられる。多種多様な文芸同人誌が頒布されていて、詩の同人誌も色々あって、次は自分も頒布する側で参加してみたいと思った。2015年4月から詩を本格的に書き始めたので、1年間の詩をまとめて冊子にしたら、2016年9月の文学フリマ大阪で頒布できるのではないか。そうして、初めて作った小冊子『湖面』で本作りの楽しさを知って、気づけば4年連続で私家版詩集や個人詩誌を作っていた。
初めて作るとき、ネットを検索しても私家版詩集の作り方はよく分からなかったので、小説同人誌の作り方を参考にして作った。印刷所もサポートが充実していたので、同人誌が中心の印刷所を使った。
というわけで、ざっくりとした作り方と、頒布した方法、作ってみた感想を書こう。
☆私家版詩集の作り方
〈0:前提〉
○詩集に載せる詩は全部揃っている
○詩集のタイトルが決まっている。
○本の大きさが決まっている(B6とかA5とか文庫とか)
○作りたい部数も決まっている(30部とか100部とか)
○大まかな予算も決まっている(2万円くらいとか、8万円以下とか)
○ざっくりと装丁のイメージを持っている(表紙はカラー印刷がいいとか、箔押しをしたいとか)
○使用ソフト:本文データはWord
〈1:配列を決める〉
わたしが使った印刷所はどこも、本のサイズとページ数と印刷部数によって印刷費が変わった。ネットを検索して、いくつかの印刷所の価格表を見て、どのサイズで何ページで何部作るとだいたい何円になるのか、把握した。
また、webサイトで自動見積もりができる印刷所も多い。そのときに、ページ数を入れる必要があるため、まずは本のページ数を確定させたいから、詩の並び順を決める。
慣れてきてからは先に大まかなページ数を決めて、見積もりや印刷予約をするようになったけれど、最初のうちは入れたい詩が入らなかったということが起こらないためにも、先に並び順を決めた方がいいと思う。
〈2:本文データを作ってみる〉
詩の並び順が決まったら、その順番通りに詩を並べたひとまとめのデータを作る。このとき、扉(本を開いたときの最初のページ)・目次・奥付(発行者名などを載せる最終ページ)の存在も忘れない。本文データを作るときは、実物の本を見ながらやるとわかりやすいと思う。
詩を並べる前に、まずはページ設定をする。用紙サイズはA5やB6など自分が作りたい本の大きさにし、ページの余白・1ページあたりの行数・1行あたりの文字数・フォントの種類・フォントサイズは自分が読みやすいと思うものにする。手元の詩集に物差しを当てて測ってみたり、一度自分で設定した内容で数ページ分プリントアウトしたりすると、イメージが掴みやすいと思う。
ここで、ページ数が決まる。
見積もりをして印刷所を決めた後に、調整することもできる。
〈3:印刷所を決める〉
ネットで検索すると、いろいろな印刷所が見つかる。印刷方法は、少部数の場合たいていオンデマンドになると思う。
印刷所のwebサイトで簡易見積もりや自動見積もりをするとき、入力するのは、本のサイズ・本文のページ数・印刷部数のほかに、表紙の印刷色(フルカラー・モノクロ・カラーインク1色刷り)、使う用紙(表紙・本文)、遊び紙(表紙と本文の間に挟む紙)の有無、が多い。
使える紙の種類や、インクの色も様々。紙の質感は実物を見ないとわかりづらいので、紙見本などの資料請求をするのもおすすめ。
見積もりの額と自分の予算を比べて、自分が作りたい仕様で本を作れる印刷所を選んだ。
印刷所を決めたら印刷費用が確定するので、頒布価格を何円にするのかも考えておく。
〈4:本文データを整える〉
印刷を依頼する印刷所のデータ作成ルールに沿って、本文データを調整する。奥付も整える。発行者名・連絡先(メールアドレスなど)・発行日・印刷所などを載せる。印刷所によって、奥付に必ず載せる項目が指定されていることもある。
それから、わたしは奥付の下に頒布価格を載せるようにした。最初は載せていなかったのだけれど、それだとすぐに価格がわからず、不便だと感じたので。
また、Wordデータでは入稿できず、PDFに変換してから入稿することがほとんどだった。
〈4.5:必要に応じて、印刷所を予約する〉
印刷所ごとに注文方法が異なるので、依頼すると決めた印刷所のルールに沿って注文する。印刷所によっては、納品日に対して入稿の〆切が複数設定されていて、〆切が納品日に近い(例:5日前)ほど価格が高く、逆に納品日から遠い(例:30日前)ほど安くなるということもある。
〈5:表紙を作る〉
本には表紙も必要……表紙作りが一番難しかった。サイズやデータ形式など、印刷所のルールに沿って設定をして、表紙をデザインする。商用利用可能な素材(写真やイラスト)を使う。表紙のサイズ設定がややこしくて、印刷所の説明をよく読み、用語がわからないときは検索して乗り切った。
〈6:入稿する〉
目次や奥付は忘れていないか? サイズは間違えていないか? データ形式は印刷所のルールに沿っているか? 必要なデータは揃っているか? などなど、心配性なので何回か確認してから、データをアップロード(入稿)していた。
〈7:本が届く〉
届いたら、数を数えて、乱丁や落丁がないかをチェックする。本は予備として、注文した部数より少し多めに入っていることもある。
☆頒布した方法
〈1:文学フリマなどの即売会〉
文学フリマ大阪と京都には、コロナ禍が始まるまでは継続して出店していた。落ち着いたらまた出店したいと思っている。直接読み手の方とやり取りができるのが楽しい。当日は自分のブースに立ち読み用の見本を置き、見本誌コーナーにも1冊見本を置くようにした。すると「見本誌を見ました」と来てくださる方も多くいらっしゃった。
他にもいくつかの即売会に参加した。
〈2:本屋さんで取り扱ってもらう〉
何度か訪れたことのある本屋さんに、私家版詩集を置いてもらっている。委託なのか買い切りなのか、卸価格は何割にするのか、などは本屋さんと交渉する。
それから、オンラインショップの架空ストアさんに委託している。
〈3:自家通販する〉
BOOTHやBASE、Storesなどで、個人でもオンラインショップを開くことができる。わたしには合わなくてやめてしまったけれど…。
☆感想
A4のコピー用紙に縦書きでプリントアウトするのとは違って、本の形で手に取れると楽しい。わたしは、文学フリマに出るために初めて作った冊子を思いの外手に取ってもらえたので、詩誌への投稿に踏み出した。その意味でも、世界が広がって楽しかった。私家版詩集は頒布を自分でしなければならなくて大変なこともあるけれど、手に取ってもらえると嬉しいし、ましてや賞の候補になるとは予想外の喜びだった。
思い立った時に、すぐに作れるのは私家版のよさだと思う。入れる詩を決めて、配列を決めて、表紙を作って、と作業すれば、1~2ヶ月でも作れる。『声を差し出す』がそんな感じだった。夏までに少し作業をしていて、秋が深まったときにやはり作ると決めて、11月下旬に完成した。
これまで私家版詩集を作って来たけれど、私家版でできることはやれたかな、という感じが今はしていて、次の詩集は出版社から出したいと思っている。