東京旅行記 20250503〜0505

 最近、東京へはライブを観に行ってばかりだと気づいて、久々にゆっくり観光するために行くのもいいかもしれないと思ったのが年始早々。その日のうちにゴールデンウィークの飛行機を調べたら往復約2万円、ホテルも2泊で2万円ちょっと。これは行ける。すぐに予約してしまった。こういうとき、妙な行動力がある。

 5月3日。朝9時の飛行機で伊丹を出る。まだ朝だからそんなに混んでいない。着いた羽田も同じく。京急はちょっと混んでいた。それでもすし詰めではない。
 ホテルに荷物を預けて、恵比寿の東京都写真美術館へ行く。まずは併設のカフェでランチ。ワンプレートで、ご飯、豚肉と白インゲン豆の白ワイン煮、キャロットラペ、紫キャベツのラペ、グリーンサラダが載っていた。サラダに程よくスパイスが効いていて、スパイスを揃えるのは大変だから、これは真似しづらい。白ワイン煮はもしかしたら家で再現できるかもしれないと思った。たぶん、ローリエと黒胡椒を効かせたらよい。
 展示を見る。3つやっているうちの「不易流行」というもの。写真はカメラという機械を通すから誰でも一定のものを撮れる。それに個性が加わるのは、何をどう撮るか(被写体と技術)、どのような視線で撮るか(カメラマンの意思)だろうと思った。わたしはラルティーグが撮った躍動的な女性の写真が大変気に入って、写真を写真で撮った。あと、石内都の「mother」の口紅の写真を見て、これがあの有名な作品か、という感想にもならない感想を抱いた。キャパの展示を見るか迷ったけれど、先日占領下のパレスチナのドキュメント映画「ノー・アザー・ランド」を見たばかりでもあり、戦場を見る気力がなかった。
 そこから、広尾のメルティング・イン・ザ・マウスというカフェまで歩き、ソフトクリームを食べた。ここは昨年の夏、SHINさんの恵比寿リキッドルームでのライブ前に行こうとして、チケットの整理番号が2番で緊張感があり、お昼ごはんを食べるのがやっとだったので諦めたお店。ようやく行けた。ミルク感が絶妙で、さっぱりし過ぎず、濃過ぎない。あとソフトクリームの割に溶けないから、あわてて食べなくてよい。
 機械書房へ行くと決めていたので、地下鉄を乗り継いで水道橋へ向かう。確か、15時30分くらいに着いた。本を見て、岸波さんと長々とお話しさせてもらった。途中でやってきたお客さんも交えてお話しし、コトアムの担当の方がいらっしゃってお話しし、お店が終わった後東京ドームシティでビールをご馳走になってさらにお話ししていた。
 結局のところ、わたしは力み過ぎずに詩を書き続けるだけだ。大きな目標である詩を続けて、詩集を商業出版すること、書くことを仕事にすることを見失わなければ、細かな方法は幾らでも試して諦めたらよい。できること、できそうなことから始める。夢・目標が叶うか、本当にやりきったから諦めがつくと思えるまでは、やっていくしかないのだ。次の詩集は原稿をまとめているけれど、出すことを焦らずにやろうと思う。リトルプレス(私家版)ではエッセイと日記をやってみる。

 岸波さんに「創作講座に通うことにして、詩と小説を繋ぐエッセイを書きたい」と言ったら、おすすめの本として『泣いたって変わることは何もないだろうけれど』(パク・ジュン/クオン)を紹介してもらったので買って、次の日から読み、連休中に読み終えた。訳者あとがきによるとパクさんは「詩と散文をつなぐ本を作りたかった」らしく、わたしとやりたいことが同じでびっくりした。そして、旅や食べ物の描写、文章の雰囲気などに親近感を覚えて、いつかお会いしてみたいと思った。
 ホテルに帰って荷物を置き、晩ごはんを食べて、シャワーを浴びたら寝たかったけれども、創作講座のプロットが出来上がっていないので少しだけ粘って、眠くて頭が回らなくなったところで眠った。

 5月4日。ホテル近くのファミレスで朝ごはん。空いていたしドリンクバーもついていたので、長居してしまう。昨日の日記を書き、プロットを作り、よくわからなくなってきて本を読んだ。
 千疋屋総本店日本橋本店フルーツパーラーへ行く。東京で時間があるときは、千疋屋か資生堂パーラーに行きたくなる。開店20分前くらいに着いたらすでにそれなりの列ができていて、でも多分開店と同時に中へ入れるだろうというくらいの人数。果たして、開店してすぐに入ることができ、テーブルかカウンターかにこだわりがなかったので、オープンキッチンのところのカウンター席になった。店員さんが迷いのない手つきで果物を大きく切り、皮を剥き、食べやすく切って盛り付けていく様がよく見える。
 わたしはパフェやフルーツサンドではなく、アソートフルーツ(果物盛り合わせ)を頼むと決めていた。メロン、スイカ、マンゴー、キウイ、イチゴ、バナナ、オレンジ、パイナップル。それにしても、普段ならば果物に払おうとする値段ではない。しかし、それだけの金額を払っただけのことはあった。まず盛り付けが美しくて煌めいていたし、果物は甘さだけが強調された味ではなく、その果物が本来持っている味わいがしっかりしている。果肉も適度な硬さで食感を保ち、みずみずしい。わたしはバナナが死ぬほど苦手でいつも無理やり食べるのだが、普通に食べられた自分に驚いた。そして、接客も丁寧で、客の様子をよく見ている。
 今日は上野公園を満喫するぞ、と思っていたのでまずは国立西洋美術館へ行く。常設展を見る。広くていろいろ展示があって、情報量にクラクラする。やはり、印象派の風景画が好きだと思った。モネの「睡蓮」と「舟遊び」など。この辺りでちょっと疲れてきて、ホテルに帰るか迷ったのだけど、果物だけではお腹も空いてきたし併設のレストランで一旦休憩する。空腹が解消したことで元気が出てきて国立科学博物館へ行ってみたら、人がすごく多い。西洋美術館の比ではない。子どもがたくさん。地球館も日本館も人混みでしんどくなってしまい、無理を察して退散する。
 もしかして、水分が足りていないのではと気づき、駅のホームでポカリスエットを500ml飲み干し、ホテルに戻る前に水を2リットル買って部屋で1/3くらい飲む。しばらくすると出かけられるくらいに回復したので、七月堂へ行く。くどうれいん『日記の練習』を買って、後藤さんとお話しし、『あかるい身体で』のサイン本を作った。
 ホテルの部屋で読書とプロット作りと思ったけれども、疲れてそれどころではなく、22時頃には眠ってしまった。

 5月5日。月曜日なので6時にアラームが鳴って起きた。またしてもファミレスでドリンクバー付きの朝ごはん。日記、プロット、読書。プロットはひとつできた気がする。
 15時台の飛行機で帰るので、午前中はどこかへ行ける。リベンジ上野公園と思って、国立西洋美術館に行き、今度は企画展「西洋絵画どこから見るか?」を見た。やっぱり、宗教画や人物画より風景画が好き、その中でも印象派と思って歩いているときに、カペ「自画像」が目に入る。どこか現代の自撮りっぽさがあって、表情が澄ましているのではなく、生き生きしているのが印象的だった。思わず栞とポストカードを買った。
 まだ少し時間があったので、アトレ上野の中にあるあんみつみはしであんみつを食べる。こしあんと求肥も美味しかったが、何より寒天がすごかった。水そのものを食べているような透き通った味だった。
 ホテルに戻って荷物を引き取り、お昼ごはんを食べて、早めに羽田空港へ。お土産を買い、搭乗待合室内でテーブルのある席に空きを見つけたので、読書とプロットを進める。

 1泊2日では行き帰りの時間に縛られるので、どこか「訪問」という感じがする。「旅」というには2泊3日以上いると思った。秋に訪れる予定の町が気に入ったら、来年のゴールデンウィークに3泊4日くらいしても楽しそう。